2023年9月4日月曜日

公立高入試と内申点

「高校入試に向けて、そろそろ準備しなきゃ!」ってなるのは、だいたいいつ頃からなのでしょう?
「高校入試の点数の1/4は、中3春の時点で、もうすでに決められちゃってますよ」というお話です。

北海道の公立入試の概要については、道コン事務局のサイトに詳しいので、そちらをご確認下さい。
その上で、注意しておくべき点について補足を加えていこうと思います。

内申点について

高校入試において、合否判定の中心になるのは「中学3年間の評定から計算した"内申点"」と「入試当日の点数から計算した"学力点"」の2つです。
"内申点"は、各学年の学年末5段階評定から計算され、計算式は
(1年末評定の合計×2)+(2年末×2)+(3年末×3)
となっています。
これを20点ごとの段階ごとに切ったものが"内申ランク"と呼ばれるものです。

計算上は3学年の成績の比重が多少高めに設定されていますが、見方を変えれば、内申点315点満点のうちの180点分は1・2年生の学習態度や定期試験の結果によって決められてしまうということになります。
「内申点315点+当日の学力点500点のうち、内申点の180点分は中2終了段階で確定している」わけですから、・・・つまり、「公立入試の1/4以上が、中3春の段階で既に終わってしまっている」とも言えます。
(※私立入試では、専願・単願の合否判定基準や奨学金の審査に内申ランクを用いるため、公立高校以上に内申の比重は高いと言えるでしょう。)

内申ランクの分布

内申ランクは学年末の5段階評定で計算されます。
「5段階評定」というと「"評定3"で平均的」というように感じますが、実際はどのような分布になっているのでしょうか。
2023年8月の道コンの総合資料を元に集計してみたものが次の表です。
これを、内申ランクごとの累積度数に注目してグラフ化すると、このようになります。

道コン受験者の1/3はA,Bランクであり、受験者の平均がCランクになっているのが読み取れます。
もちろんこれは、道コン受験者のデータですから「道コンは塾に通っている子が受験するのだから、ランクが高いのは当然だ」とも言えます。
しかし、A,Bランクの受験者の点数の分布を見ると、「Aランクであっても点数は・・・」という子もかなりおり、「上位層ばかりを抽出してきた」とは言えなさそうです。

現在の石狩管内の中3生は18,000人ほど。(道教委の統計)そのうちの8,500人が道コンを受験しています。
道コンのランク分布が均等だとすると、8,500人のうちの32%、つまり2,700人程度がA,Bランクで、『評定の大半が"5"』だということになります。
評定に"5"がつくと「非常に優秀」と考えがちですが、現在の中学校においては実はさほどハードルは高くなく、取れている子が意外と多いことがわかります。
3年間の評定のほぼすべてを"5"にしなければならないAランクはさすがにそう簡単には行かないと思いますが、B・Cランクくらいであれば、意外と簡単に取れてしまうのです。
中1段階から塾に通うなどして熱心に勉強している子の場合、「B・Cランクで"普通"、Dランクは"今ひとつ物足りない"」と考えるくらいの方が良さそうです。

中学校が公式に学年の評定の分布を公表していれば、評定を受け取った時点で自分の位置が見えるのでしょうが、残念なことにそのようなデータはあまり公開されないようです。
周りの子達がどう評価されているかを知ることができないわけですから、「評定"4"だって!よく頑張ったね!」と思っていると、実はクラスの大半が評定5が付いていた、ということも十分にあり得る話です。

受験先と内申ランク

道内の公立高校では、基本的に『内申点5割・学力点5割』で合否の判定が行われます
中3の12月に各中学校で進路指導を行うわけですが、多くの場合「君は内申が◯ランクだから、これくらいの高校が妥当かな」というように、おおよそランクごとに受験先が絞られることになります。
シグマゼミ周辺の高校だと、およそこんな感じでしょうか。

さて、「内申ランクをもとに、輪切りのようにして受験先の選定がされる」という前提で考えると、当然ですが入試当日の受験会場には、<ほぼ同じ内申点の受験生>が集まります。
入試当日朝の時点でのそれぞれの受験生の持ち点は、内申点によって多少の差(20点程度)はあるとはいえ、まぁほぼ同じと考えてよいでしょう。

しかし、この内申ランク、学校内で定期試験や提出課題などを元につけるため中学校ごとに評価基準がバラバラです。
定期試験で90点を取っても評定"4"をつける先生もいれば、70点程度でも課題など高く評価して評定"5"をつける先生もいます。
また、その定期試験自体も作成者によってまちまちで、どの問題も簡単であっさりと満点の出るような試験もあれば、一方で平均点が50点にも満たないような試験もあります。
つまり、「私は"Bランク"」と言っても、その中には当日の学力点で8割取れることを期待できるBランクの子もいれば、6割すらも危ういBランクの子もいるわけです。

先程の分布表に、実際の点数を載せてみました。
同じ"Bランク"と言っても、試験の点数にはそうとうな幅があることがわかります。
内申点自体は、甘くつけられようが厳しくつけられようが、どこの中学の子も"内申点"として同等に評価されるわけですから、ほぼ同じランクの子たちが受験することになる中では、合否に大きく関わってくるのは、得点力の方ということになります。

得点力をどうつけるか

多くの中学生が、道コンに対しても中3の9月から行われる総合A/B/Cに対しても「難しい」と言います。
「難しい」と感じる理由として、「定期試験とは違って出題範囲が広い」という試験そのものの要因に加え、「思考を求める出題にそもそも慣れていない」という本人側の要因があげられます。

国語や英語であれば「自力で長文を読んで問題を解いた経験がほとんどない」、数学では「複雑な方程式や関数の融合問題を読み解いた経験がない」、理科では「教科書以外の未知の実験の問題を見たことがない」、社会でも「時代や地域を横断するような問題や、初見の資料を解釈する必要のある問題を解いた経験がない」などなど。
学校や塾の授業で習った内容が知識としては頭の中にあっても、それを試験の場面で上手く引っ張り出せるかどうかによって試験の点数は変わってきます。
習ったその時点では解けていたものも、それを広い範囲で、習った時点とは違う形で問われたときには、「なにが問われているのか、それ自体が見えない」となるようです。

では、この苦手意識を解消するにはどうしたらよいのでしょう。
まずは、目先の定期試験のみを追いかけるのではなく、日頃からいろいろな出題に触れておき、ひとつひとつの内容を丁寧にしっかり考えながら身につけていくことだと思います。
地理の統計ひとつ取ってみても、「とにかく覚える」であれもこれも丸ごと覚えようとするのと、「この地方はこういう気候でこういった土壌だから、稲作・畑作には適さないだろうから畜産が多そうだ」という入れ方をするのではまるで違います。
どの分野のどの問題にも"背景"があるはずで、その背景を知った上で問題に向かうのと、問題だけを眺めるのでは、見え方はまるで違ってくるでしょう。
そういった問題の背景を少しずつ見せ、いずれ遭遇する未知の問題に対しても、どうにかヒントを見出し、丁寧に解きほぐし、解決できる力をつけることが、シグマゼミの指導の目標です。

シグマゼミの進路説明会

シグマゼミでは、毎年3月に中学生の生徒・保護者を対象に『高校を選ぶということ』についての説明会を行っています。

この記事であげたようなデータをはじめ、高校入試の制度や高校のカリキュラムなどについて2時間程度お話しています。
動画アーカイブがございますので、興味のある方はご相談ください。(※動画・資料で2,000円いただきます。)

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