裁量問題対策のこと

公立高入試で中堅以上の学校を受験するならば避けて通れない"裁量問題"。この時期の学習塾のチラシには『裁量問題対策』というような文句が並びますがー・・・  


裁量問題が導入されたのは

10年ほど前、道の公立入試問題は、全国的に見てそうとうに簡単なレベルと言われていました。
札幌南高では合格者平均点が300点中270点(各科目60点中54点を取っている計算)にもなり、数問のケアレスミスが順位に大きな影響を与え「どれだけ優秀な生徒でも1問のミスが合否に直接影響する」という状態でした。
そこで、ケアレスミスではない<学力差による点数差>を作るために2009年度入試から導入されたのが、「国数英の3科についての裁量問題」です。

裁量問題のシステムとレベル設定

裁量問題を採用する高校では、国・数・英の3科目に限り、標準問題の大問1題(配点20点程度)を差し替え、基本問題を減らして標準~応用レベルの問題を増やす形で出題のレベルを上げています。
裁量問題の導入当初は、裁量問題の配点20点分のうち、最上位の生徒でも10点ほど、中堅校では5点も取れてないような状態が続き、「大半の受験生が解けなくて結局点差がつかないから、中堅校くらいを目指すならそもそも解く必要もない」という感じでした。(2011年当時の記事がコチラ)
ところが、この数年で国語・数学の難易度は下がり続け、合格者平均点の推移(下の表)を見ると、2011年から比べ2014・15年は合格者平均点がかなり高くなっていることがわかります。

合格者平均点の推移
年度国裁量数裁量英裁量5科裁量
201139.928.837.2193.0
201445.338.640.1216.6
201546.737.242.1216.9
201636.035.838.2202.1
※データは道教委発表の資料から抜粋
※理社には裁量問題がなく、標準問題受験者も含んでの平均しか発表されていなかったため、除外しました。

2016年度入試では国語が多少難化しました(出題された文章は以前から比べそれほど難しかったようには思いませんでしたが?)が、それでも南高・北高などの最上位校では合格者平均点が5科合計で250点前後になり、以前から比べると高得点帯での競争に戻りつつあります。

道コン事務局による合格者平均点の追跡調査
年度札幌北西旭丘新川
2014255.5257.7245.0223.6
2015258.6253.6242.7218.2
2016247.9241.4232.7202.7

教科書が刷新されたタイミングもあってか、北高が英数に傾斜配点を導入するなどの変化もありますが(詳しくは北高のサイトでご確認を。)道教委が発表している報告書を見る限り、おおむね「難易度は適正」と評価されているので、難易度自体はさほど大きくは変わらなさそうです。

裁量問題への対策

さて、多くの学習塾が『裁量問題対策』を売りに出し、場合によってはそれ用の特別講座を通常とは別枠で打ち出すわけですが、そこまで構える必要はあるのでしょうか?
各教科での出題についてまとめました。
【国語】(2016年度は21点分)
例年長文1題が差し替えられていたところ、標準問題に漢字・語彙などの小問集合が配置され、その分を論説1題で補う形式になった。複雑な語彙を含む本文に文字数の多い記述問題が配置され、読解速度と記述答案の緻密さが要求される。

【数学】(2016年度は21点分)
標準問題の大問1にあたる基本的な知識や計算力を問う小問集合を差し替え、標準~応用レベルの小問集合が配置される。見た目では難しそうに見える問題が並んでいるが、ここ数年は内容的にも簡単なものが増え、問題によっては正答率が5割以上になっている。裁量問題といえども、半数近くの問題が「解けないとマズイ問題」に変わりつつある。

【英語】(2016年度は20点分)
従来の長文に比べ、未知の単語が多く含まれた語数の多い文章が出題される。全体を通すとかなりの語数を読むことになるため、初見の英文を素早く正確に読むことが要求され、長文を読み慣れておく必要がある。また、25語程度の自由英作文が出題されているため、基本的な英作文にも慣れておく必要がある。

試験問題はこちら
裁量問題だからと言って「なにか特別な対策が必要か?」といえば、私の返答は「必要ない」です。
問題を見る限り、標準問題と比べると裁量問題の難度が高いことは間違いありませんが、それでも中学での学習内容を駆使すれば解けるはずのものが大半を占めます
国語・英語ですべきことは「ある程度の長さの文章を速く正確に読むことに慣れておくこと」、数学では「一見難しそうな問題を既知の知識に結びつけて考えられるよう、いろいろな出題に慣れておくこと」です。
つまり、標準/裁量と区別はされていても、中学入試のように"学校で扱う教科書内容とはまるで別路線の試験対策"を必要とするものではなく、あくまでも標準問題の延長上にあると考えるべきです。

『裁量問題対策』を売りにするのは?

ではなぜあちこちの学習塾で"裁量対策コース"が別枠で作られるのでしょう?
おそらく、多くの中学生にとっては、普段の学習が入試を意識したものになっておらず、入試とのギャップが大きいためです。

大半の中学生は「学校の授業をそつなくこなすこと」「ワークの問題をひたすら解くこと」を勉強だと思っており、「未知の長文を自分で読む」ということも「数学の複合問題を解きほぐす」ということもほとんど指導されずに受験期に突入します。
そのため、学校の指導より少し上のレベル、例えば総合ABCくらいであっても、多少語彙の難しい論説文や未知の英語長文、数学の複合問題を見ると「こんな難しいのはやっていないから解けない」となりがちです。

つまり「裁量問題が極端に難しいから解けない」のではなく、単に「今までに学校の定期試験以上のものを見てこなかったから、総合問題を自分で解くことに慣れていない」に過ぎません。
簡単な問題が散らばっているために中3冬辺りからの急備えでもそこそこの点数になるのが標準問題、そう簡単には点にならないのが裁量問題で、入試時期に入ってからの『裁量対策』は、そこまでの演習量の不足を慌てて取り戻そうという程度ことだと思っています。
であれば、本当に必要なのは、1月・2月にあわてて行う『裁量対策』ではなく、普段から各分野で学校の要求より少し上の勉強をしておき、様々な問題に対して柔軟に対応できる力をつけておくことではないでしょうか。

これまでにシグマゼミから北高に合格した生徒を見ても、入試直前期であっても、『裁量対策』というほどの特別なことはさせずにきました。
強いて言えば、ただ淡々と他県の入試問題なども含めていろいろな問題を解き続け、知識と技術の幅を拡げていっていたというくらいです。
もっと早い時期、例えば中2のうちから、事ある毎に長文問題を解かせたり少し難し目の問題を解かせたりはしてきていましたが、それは別段入試を意識してのことではなく、「余力があるならこっちもやってみたら?」という普段の指導の延長上に過ぎません。
それでも十分に公立入試で250~260点くらいに到達し、私学受験では学費免除の特待も認定されています。
「東西南北を目指すなら特設クラスで」という考え方もあるのでしょうが、普段からの準備ができていれば、そこまで構えるほどのことではないだろうというのが、正直なところです。